サムとまずはじめに奥にある部屋へ向かった。
開け放れているが、中までは見えないのでおずおずと覗いてみたら、卓球台が1台あり、仕切りがしてある奥は犬と遊べるエリアのよう。
昔の何処か公民館や町内会館にあったような、これまた懐かしい雰囲気の空間だ。
はっきり言えば無造作に卓球台があるだけなのだが、ホームページでも、チェックインの際にも何も説明がなかった。
そういえばチェックインの際に予約の際には何も言わなかったので、予防接種証明書を持ってこなかったのだが、提示せねばならなかったようで、帰宅後FAXで送れと愛想悪く態度も悪かったけれど受付に言われた。
よくよく考えたら受付では食事の時間と場所だけの説明で部屋に案内する事も、その他の施設についての説明もなかった。
放任主義な所なのか、たまたまなのだろうか分からないが、サービス業でしかも一応ホテルなのだからもう少し親切にしてくれてもいいのではと思ってしまった。
ある程度教えてくれれば遠慮なく遊ぶこともできるのだが、何も聞いてないので判断がつかず遠慮してしまうが、特に執着もないので、大丈夫だと思われる所を探す方が面白いとサムと一緒に廊下を進む。
ラウンジらしき所が見えてきたのでお邪魔する。
カウンターにはコーヒー紅茶が用意されていてフリードリンクのよう。
突き当りには暖炉らしきものとソファがあるので、間違いなくラウンジの様だ。
そしてラウンジの先には看板が立て掛けてあり「ドッグラン」とあったので、今度は迷わずサムと扉を開けて中に入った。
屋内ドッグランとしては一般的なカーペット敷で窓からの自然光だけで明るい。
入り口付近におもちゃ箱、反対側の隅にクッションなどが置かれているだけなので、邪魔なものはないため、スペースを十分に使えサムと遠慮なく遊ぶことが出来る。
今まで入ったことのある室内ドッグランとはなんとなく趣が違ってドッグランというよりはプレイルームがしっくりくる場所にテンションが上がる。何よりもサムが楽しそうに遊んでいるのが新鮮だ。
一遊びして再び探索をするべくドッグランを後にして廊下を進むと上ってきた階段とは別の薄暗い非常階段のような簡素な階段が見えたので、従業員専用かとも思ったのだが、逆に面白そうだと思い迷わずサムを道連れに降りていく。
地下のようなところに出たので、まずは突き当りまで進もうと仄暗い殺風景な廊下をどんどん進むと、これまた予想外の自動販売機が置いてある小部屋があった。
そして自動販売機で売られているのは今では見ることもない瓶ジュース。
懐かしいというよりも驚きの瓶ジュースの自動販売機。
今でもあるという事と瓶ジュース未だにあったのかというダブルの衝撃。
自動販売機も瓶ジュースも通常目にするものと随分と違うものだとしみじみ思う。
特に今でも売っているとは思わなかったジュースは懐かしさひとしおで感慨深い。
古き良き昭和だ。
またここの部屋は休憩所のようで、昔ながらのマッサージチェアがあったりと昭和へトリップしている。
お風呂屋さんや温泉宿に置いてあった今のマッサージチェアとは機能も大きさも違う簡素なマッサージチェアが置かれている。
狭い小部屋にギュウギュウにギュと詰め込まれている昭和の時代のもの。
まさかホテルの隅っこに昭和の物に会えるとは思わなかったので、懐かしさに思いを馳せてしまったが、サムには思い入れも当然なく単なるモノでしかない。
匂いも動きもないから興味もわかないね。
これだけ館内歩きまわっているけれど、誰一人として会わないのが不思議だけれど、まさか昭和レトロを味わえるとは思っていなかったので、想定外の面白い宿のよう。
温泉は白濁で風情もあり良かったのだけれど、ここかしこに昭和があるのなら、どどーんと無駄に広い浴場か木の香る浴場だったらもっと面白かったなどと思ってしまう。
アメニティも十分でサービスが昭和の温泉旅館のよう。
更に食事に訪れたレストランでも懐かしさを感じるテーブルの配置。
二人用、四人用のテーブルで離してあるのが一般的だと思うのだけれど、四人用テーブルを繋げて長テーブルのように広く使えるようにしているとは贅沢な使い方で、テーブルクロスもシンプルなのが、昭和の宴会場ぽい気がしてしまう。
沢山並べられたお料理も特に奇を衒うものではなく、安定の和食会席で美味しく頂けた。
スキッパーキにとっては、温泉も食事も関係なくただひたすら待つ時間なのだから面白くはないけれど、一緒に同じ場所にいる事と食事時間が終われば、普段の日常にはない、一緒に夜のお散歩とドッグランでのプレイタイムがある。
その事を理解しているスキッパーキは席を立つと、オフされていた状態からすぐさまオンに切り替わり、途端に目がキラキラしキビキビとした動作で先導してくれる。
嬉しそうに歩いている様は本当に愛らしい。
暗くなった外に出ると宿から漏れる灯りだけなので、灯りが届かない所は真っ暗で何も映さない。
子供の頃の肝試しのように怖い方面に想像力が増してしまう。
なんとも子供の頃の記憶が揺さぶられる宿だ。
スキッパーキにとっては特に心揺さぶられることはなさそうで、いつもどおり。
昭和を共有出来ないのが残念。