スキッパーキと部屋に戻った後、少し早いけれどサムの食事を用意し始める。
温めたり、冷ましたり、切り分けたりしてサムのご飯が出来上がり。お皿に入れて差し出せば、体調もいいこともありサムはちゃんと食べてくれる。ドッグフードに関してはノーコメントだけどね。
そうこうしている間にディナータイムになり、スキッパーキと共にレストランへ赴く。
吹き抜けの天井、シャンデリア、シックなテーブルと椅子。久しぶりに訪れた華やかな場所。
雰囲気は大切なのだとつくづく感じ、案内された先はテーブルセッテイングされた席。
食事の時間は、サムは只々足元で待っていてもらうだけなのは申し訳ないのだが、一緒に居られるという一点で双方納得済み・・・だと思う。
ディナーが始まり、運ばれてきたお料理は、華やかで、彩りが綺麗、盛り付け方がこれぞプロフェッショナルな素晴らしいセンス。手が込んでいて美しい。
お味は見た目もさることながらどれもこれも美味しい。これですよねホテルのディナーは!と感激してしまった。流石プロ!プロは違う。そして、ここのホテルは今までのところと違う!もの凄く幸せだ。これがホテルだよねと久しぶりの高揚感でディナーを終えた。
食後の時間は、大人しく待ってくれたサムとのひと時。プレイタイムの始まり。その事を理解しているサムは、立ち上がって楽しそうに尻尾を振ってキラキラした目で見つめてくる。
席を立つという事はサムにとっては、待ち時間の終わりの合図。オフからオンにスイッチが切り替わる。
楽しそうに行き先を案内する様にレストランを出てドッグランに向かう。夜のドッグランはどちらかといえば遊びよりブレイクタイムに近いが、それもお泊まりだからこそできる贅沢な過ごし方。
のんびりと探検しているサムを目で追ってはいたが、ドッグラン端の闇に紛れ込んでしまいスキッパーキを見失しなってしまう。
目を凝らして見ても影との区別がつかないほど溶け込んでしまい分からなくても「サム」と呼べば、闇から飛び出してきて走り寄って戻ってくる。どこからともなく現れてくるスキッパーキがいる不思議なナイトドッグラン。
静かな夜を過ごし、沈黙しているホテルをそっと抜け出せば夜明け前の外は薄明かり。身が引き締まる中スキッパーキと朝の散歩タイムが始まる。
日々の朝の散歩とは違うところでもスキッパーキは何も気にしていないようにいつもどおり楽しげに歩く。
遊びに行った時の散歩というのはサムと一緒に目新しい場所を探索できるという格別なもの。
「お泊りする」ということは良い刺激を受けれる機会で楽しいことなのだけれど、泊まる事に加え散歩はサムと一緒に共に歩む事が凄く大切で素敵なことだと実感する時間でもある。
普段は気が付かないようなことも見つけられるし、聞かない音も入ってくる。そして樹、草、土の匂いを強く感じることができるから、ただ道を歩いているだけでも色々な発見があるので楽しい。
「気の持ちよう」なのだろうが、それだけ有意義な時間だと言える。
今回は更にモチベーションが上がってしまう理由がある。それは滅多に訪れることができないであろう場所に、サムと朝の散歩ができるという事。そしてその目的地が「牧場」という事。
「朝の牧場」というだけでプレミア感が増す。行けるということが何よりもテンションが上がっている原因でもある。
今まで一度も朝の散歩で牧場に行ったことがなかったので、特別感を感じて歩く度どんどんテンションが上がる。
牧場までの道のりは面白いこともない道だが、牧場という場所は滅多に行くことも無いし、まして朝散歩に来れる事もそうそうないので、サムに付き合ってもらっている感じにはなるが、もしかしたら昼間とは違う牛や羊、馬など動物の朝が見られるかもと若干期待もしている。
そんなことを考えている事など知りもしないスキッパーキは平常心で牧場までの道をいつもの散歩と変わらずテッテクテッテク歩いていく。
牧場自体はサムと一緒にかなり来ているので、おそらくサムはどこなのか分かっている。その証拠に来ると必ず確認する場所に迷わず行くスキッパーキ。
記憶がはっきりしているのか、臭いに惹きつけられるのか定かでないが、此処に来ると必ず確認するポイントがあることだけは確かで、そこは牧場探索のスタート地点でもある。
一歩牧場の中に入ると、観光客は誰もおらず、お店も閉まっているだけでなく、広場には動物もいない。
物凄く不思議な世界が広がっていた。
居るはずの人が、動物がいないことと、朝の冷たい空気も相まって、余計に寒々しく、SFの映画のワンシーンのようでどこかに迷い込んでしまった様な感じさえする。
動いている生き物の気配を感じること無く、牧場という場所の中に佇んでいることの不思議。これは冬の朝だからこそ、たまたま牧場の人がいないという偶然が重なってのサプライズ。
静かな観光牧場をサムと散歩出来きて良かったな。