ここの所スキッパーキサムとの散歩は辛いものがあった。
ずっと雨が続くだけでなく、台風が接近、上陸したりと悪天候が続いていたので、ま・と・も・な「散歩」ができないでいた。
サムがまだ子供だった頃と今では雨に対する反応は違う。歳を重ね経験を積むと、予測ができるので、どの様な状況になるのか直ぐに分かるようになったのだろうサムは、雨の降り方(雨の激しさ)によってあからさまにテンションが下がる様になった。
雨を気にしないで出歩くワンコ達もいる。雨の日でも何ら変わらず散歩をしているのをよく見かけるが、羨ましい。レインコートを来ているワンコもごくたまに見かけるが、ほとんどのワンコ達はサム同様何も身に着けず何も気にせず歩いている。
今では玄関を出て、雨が降っていると認識すれば、あからさまにガッカリしている。
それだけでなく、雨の中出歩くのを躊躇うという反応速度が上がっている。道路の状態を確認しているのか、雨の打ち付けている音を聞いているのか、振り方を認識しているのか、湿度に感じるものがあるのか分からないが、そのガッカリする姿は今まで散歩・さんぽ・サンポ!とドアを出るまでの姿と比べるとものすごい落差がある。
いやいや嫌なのはサムだけではないのですよ。むしろ行きたくないですよ本当は。だから毎回サムに語りかける。サム。皆お家でしてるよ。お家でしようよ。こんな大雨の中誰も外行かないよ。ね?時には呪文のように、説得するように語るも、サムは何か良くないことを言われているのが分かるため目だけを逸らし、困ったなと言う顔をする。(困っているのはこっちですから!)
雨が降っているから今日は散歩はなし。とできれば苦労は無いのだが、そうなることはなさそうだ。
そしてやっと台風も過ぎ、雨も上がりいつもの散歩ができるようになると、スキッパーキは軽快に散歩をする。
楽しげに散歩をするサムと歩いていると、見慣れた景色なのに、何となく違和感を覚える。
いつもと変わらないのに何かがおかしいのだが、何がおかしいのかわからない。久々のお日様が顔を出してくれたので、陽の光が降り注ぎそれを反射するように明るい景色の中気持ちが良い。もちろんサムも元気いっぱい楽しんでいる。光の反射?さっきから、キラキラと散歩しているサムの背景になっている運動場、グラウンドに目を向けると池がある。ああ池があるんだ。一瞬納得しかかってふと気づく。池があったかなと。
ここはすり鉢状になっていて、グラウンドの周りは桜をはじめとして、花が季節の彩りを添える散歩道にもなる。
暫く眺めていてその事にやっと気がついた。グラウンドが水で浸され池化していることに。
もともと洪水対策の治水施設も兼ねていると聞いたことがあったが、水が溜まっているところを見たのは初めてであまりにもいつもの景色と違うのだが、違和感はあるものの不自然ではないので気がつかなかった。
だまし絵か間違い探しのようだ。
グラウンドの半分はサッカー等を行う場所で、サッカーゴールがあったのだが、水没している。グラウンドの真ん中で分けているように高くなっている場所には、整備されフェンスで囲まれたテニスコートがあるのだが、フェンスだろうと思われるものが水中に見える。
散歩出来る道近くまで水が溜まっている。桜も水の中から生えているようにさえ見える。
何も知らず初めて見るのであれば、目の前にあるのは間違いなく池だと認識するはずの、グラウンドは今は水面がキラキラして周りの木々を映して不思議な光景となっている。
そんな光景もスキッパーキの目には入らず、ひたすら散歩を続けるゴーイングマイウェイサム。動かないものには相変わらず興味が薄い。
スキッパーキは誰もいない水を湛えるグラウンドには見向きもせずに散歩を楽しむ。