動けず泣き叫ぶスキッパーキ。
想像を超えた痛みがサムを襲っているのだ。
すさまじい悲鳴が轟く。
触れてはいけない。触れることが出来ない。
声をかけることしかできない。
泣き止んだサムに、お家入ろうと語りかけ、促す。
辛いであろうスキッパーキは、それでも懸命に自力で弱々しくもゆっくり我慢をしながら小さな歩幅で、慎重に歩みを進め頑張りの末にやっとの思いで玄関に入った。
玄関のドアが閉まり家の中に入れたことにほっとした。途端再びサムが泣き叫けび始めた。悲鳴が響き渡る。
サムは一歩も動かない。動かないのではないのだろう。おそらく動くことが出来ないのだ。
痛みが少しおさまった時に動くしかないのだが、動くことにより更なる痛みを受けることがあるが、正に今のサムの状態がそのようだ。
激しい痛みをこらえても、少し動いただけでより激しい痛みに襲わる。
少しでも体を楽にしようと其の場所にうずくまろうとしたようだ。
うずくまろうとした途端一旦おさままった悲鳴を、この周辺一帯に響いているだろうと思われる程の地を震わせるほどの苦しい悲鳴をあげ背中を丸くした。
見ているだけでも辛いが、サムは震えながらも再度挑戦しどうにかその場に伏せた。横にもなれず、お腹をつけた状態でさえ辛そうだが、直ぐにまた絶叫し立ち上がる。じっとしていられない痛みに耐えている。
部屋にあげることも、体をさすることもできず、容赦ない痛みに襲われているであろうサムをただただ見ていることしか出来ない無力さをつくづく思い知らされる。
代われるものなら代わりたい。サムをこの辛さから解放して欲しいと願うだけの愚かさに悲しくなる。
耳を塞ぎたくなる咆哮。耳の奥に、胸の奥に届く痛いと言う訴え。首が痛いの?せめて首輪をとれば少し楽になるかも知れない。
そう思って首輪に手をかけた瞬間、身を捩らせ、「触っちゃだめ」と云う普段の穏やかなものとは明らかに異なる今まで見たこともない耐えているのが分かる瞳なのだが、それでいて、何かに立ち向かう意志をもった綺麗な強い眼差しに見つめられた。
ただ触れるだけでも激しい痛みが増してその小さな体を貫くのか、絶叫する。軽くほんの触るか触らないか程度だったのだが、そのかすかな接触さえも苦痛でしかない。
首輪もとることが出来ない。ソフトハーフチョークだったのがまだ救いというところだが、首輪をはずすことはサムの状態が落ち着くまで可愛そうだが無理だ。
じっとしていられないほど激痛に襲われているサム。
なんとか痛みが少なくなる態勢を取ろうとしているのだが、痛みが治まらないのが見ていて分かる。座ろうとしてやめる。小刻みに動く。みているだけで辛さが伝わってくる。
それでもなんとか悲鳴がおさまり、疲れ果てているだろう小さなスキッパーキがその場に崩れるように膝を折り伏せった。歩くこともかなわない状況。それほどの痛みをこの小さな小さな黒い体が耐えている。上がり框にさえ辿り着くことができない。
少し落ち着いた感じだったので、サムが今受けている苦痛を取り除くべく考えた。
答えは一つしかない。
医者で痛みを止めてもらうしかない。診療時間はもう終わる。今からどんなに車を飛ばして行っても間に合わない。夜間診療しているところに駆け込むべきか?だが駆け込んだとして、一から調べて泣き叫ぶサムに辛さを負担をかけるだけだ。
駄目でもゴリ押すつもりで、先生と話すしかないと電話をかけた。