変調ー潜伏ー

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変調ー潜伏ー

病院について待合室で待っている時も、サムは静かに伏せっており、やっと順番が来たので、診察室に入った。

診察台の上で弱々しく立っているサムはいつもと変わらず大人しく先生に触診してもらっている間も一言も声を出さない。


だから分からない。

丁寧に全身触診してもらっている最中もサムは特に反応するわけではなく、首周りを確認されている時に若干嫌がるぐらいの反応だったので、状態がよく分からなかった。

それだから、特に大した事でもないと捉え、注射を打ってもらったこともあり、ほっとしてしまった。


あとは薬を飲みきれば全快するものだと短絡的に考えていた。

お医者さんに来て、診てもらって、特に重大なことを言われるわけではなく、薬ももらった。これで安心だと普通は思うのではないのだろうか。

スキッパーキサムも明日になれば元気になる!

そう思っていた。痛い思いをして打ってもらった注射も無理無理飲まされた薬もサムには全く効いていないことをこの時は知る由もなかった。


昨日と同じぐらいの深夜にサムが再び「キャン」と泣いたのが聞こえた。


だが、先生に診てもらっているし、注射が効いているはずだから痛みが酷くなるなどとは少しも思っていなかったので、サムの鳴き声に不安を覚えたのだけれど、一晩経てば薬が効いて良くなる。

今度こそ朝になったらいつもの元気なスキッパーキサムに戻る。そのために時間が必要なわけで、早く朝になってほしいとさえ思った。

だが、朝になっても元気な姿をサムは見せない。昨日よりも大人しく、更に弱々しくなったように見える。

先生に触診した際にサムは首を触られる時に少し引いたので、首が痛い様だという事で、首に負担をかけないように言われていたので、昨日から階段は抱いて昇り降りをして、水飲み、ご飯の器を置く台も少し工夫して若干高くして、できるだけサムの首にかかる負担を少なくするようにしている。

サムを抱き階段を降りてからゆっくりとサムをおろすも朝の挨拶さえしないその様子に不安が募る。

できれば、サムに負担をかけることはしたくないし、体が回復するのを待ちたいのだが、生理的にサムの体に悪いから単純にそれだけの理由で、サムを散歩に誘った。

行きたくない雰囲気を醸し出してはいる小さな体と下がっている尻尾が気の毒なのだが、それでも分かってくれているのだろう渋々ながらも大人しく従うスキッパーキだ。

普段の軽快な足取りは無く、一気に歳をとってしまったかのように、弱々しい足取りではあるがサムは頑張って歩いた。


そして最大の難関薬の時間だ。

薬をサムに飲ませなければならない。食べ物も取りたくない状態だから薬など口にするわけはない。


フードファイトをしていなければ、サムが何でも普通に食べれば薬を与えるのも苦労することはないと思うが、何も口にしたくないサムは更に取りたくないハードルが上がっている。


とても可愛そうなのだが、嫌がるサムに薬を無理やり飲ませようと小競り合いになる。その時サムの首が上に向いた瞬間小さい声だけどサムが「キャン」と鳴いた。

罪悪感を覚えるも薬を飲んでもらわないといけない。ごめんねと謝りつつサムに薬を無理矢理飲ますが、上手に薬を出してしまう。何度目かようやく薬を飲み込んだのを確認しほっとした。

これまでのサムの様子にまだ治っていなかったのかと落胆したのだが、効きが遅いだけで、これから薬が効いて良くなると思いたかったし思い込もうとしていた。

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