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プールから上がる

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プールから上がる

サムの瞳にはもはやプールサイド一点しか写っていない。

体が沈んでいるわけでもなく、泳げないわけでもない。それでも必死に、本当に必死に陸に上がろうとする。

犬種によって泳ぎが得意不得意、水が好き嫌いがあると言われている。

水鳥の猟の狩猟犬としてゴールデン・レトリーバーは水の中に入ることが好き、同様にラブラドール・レトリーバー、スタンダード・プードルも水好き。ニューファンドランドに至っては、海難救助犬として活躍してきている。泳ぐことだけでも大変なのに、水難救助するのだから、その能力は素晴らしい。

水辺での作業をしていたワンコちゃん達は水に対して抵抗がなく、泳ぎも好きという特徴に対して、土の中の獲物を追いかけていたり、水へ入る作業をすることがないワンコちゃん達、短頭種はあまり得意でない。

スキッパーキは小型の害獣をハントしていた。その場所は陸地であったり、船の上であったりという。足元がしっかりしていたわけで、川や、海の中にある何かを回収するということはしない犬種だから、犬種が持つ特性に泳ぎというものに関しては適正があるわけではない。

だから、そもそものスキッパーキサムの反応は理にかなっていると言ってもいいのだけれど、少しでも楽しく、涼しく夏を過ごしてほしいという勝手な思い込みが捨てきれない。

それに、ライフジャケット物凄く似合っているよサム。着てほしいのだ。今まで服、ハーネス、クールコートと少しでも体を包むものは、ことごとく拒否されて、残念な結果になっているけれど、それでも着てほしい。着て水遊びを楽しんでほしい。

サムの身の安全を確認したいだけなのだが・・・思い通じずですね。

今回もとりあえずは諦めるとして、ライフジャケットをスキッパーキから外すと、サムは今までの心ここにあらずとは打って変わって、楽しげにプールサイドを走っていく。

走っていった先はプールで泳いでいるイタグレちゃんの近くだ。今にもプールに飛び込みそうな姿勢でイタグレちゃんのそばにいる。いっそ入ってしまえばいいのにと思うのだが、そこは思うような事をしない。

プールの中ではイタグレちゃんの事さえ眼中になかったのに、上がった途端側に行くとは一体スキッパーキくんきみはいつイタグレちゃんを見初めたの?そもそもそんな余裕がどこにあったのだろう?まったくもって不思議ちゃんだ。

そんなサムのすぐ横を華麗な飛び込みでゴールデンちゃんがプールに入っていく。夏休みの絵日記に描かれる様な楽しい夏の日。

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