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スキッパーキのサムとウィペット

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スキッパーキのサムとウィペット

スキッパーキサムと強風に立ち向かい歩き続ける。

先ほどまで聞こえていた声も聞こえなくなり、ひと気もない、ただ風に煽られる草木の葉の当たる音と唸る様な風の音がするだけで、まるで道に迷った感じにさえなるほど殺風景なところにいる。若干不安になりながら歩くと強い風に乗って潮の香りがして来たので、海が近い事を認識するという感じだ。

予想もしていなかったこの静寂さに加え強風が一向におさまらない事に妙に寂しい感じになる。あまりに静かなので、本当にこっちで良かったのだろうか?とあまりにも広いので、ここは広場ではなく単なる空き地ではないのか、本当にこっちで良かったのかと思った時にフェンスが見えてきた。
良かった、フェンスの所が恐らくドッグラン。皆んなが楽しんでいる場所からかなり離れた所に作った訳ですねとホッとする。

思っていたドッグランとは違うドッグランがあった。ここに着くまでに強い風に色々とこ削ぎ取られてしまったようで、すでに疲れてしまっていたから感動がなかったのかもしれない。何時もならスキッパーキのサムも率先して行くよ的にドッグランに向かうのだが、そういう感じではない。やっと着いたドッグランには2匹のウィペットがいるのが見えた。
楽しみに来たのだけれど、風が海辺だからか更に強く、間違いなく吹きさらしの強風だ。潮を体全体で感じられるぐらいここは目と鼻の先が海だとわかる。
心なしかサムのテンションがあまり高くない。散歩大好き、フリーで遊べるドッグランも好きなのに、いつもの元気一杯スキッパーキな感じが無い。

とにかく目的地のドッグランに来たのだから、入りましょう。こんにちはと挨拶をして中に入ると、すぐさま二匹のウィペットがやってきた。特に吠えるわけではなく、敵意も無さそうで、既にサムにまとわりついている。特に問題はなさそうなのでサムのリードを外すと、いきなり一匹のウィペットがサムを追いかけ回わしはじめた。

嫌がるサム。懸命に走り出す。サムは決して足は遅くはない。だが、相手は究極のスプリンターウィペットだ。
小型犬と中型犬それだけでも足の長さが全然違うし、ウィペットは長い脚とスマートな流線型体格でまさに走るための体全身バネ的な、しなやかで力強い美しい体型だ。ウィペットに比べたら、スキッパーキはずんぐりむっくりチビだ。振りきれるわけがない。
それでも一生懸命、強風にもめげず、走っているスキッパーキ。最初はただウィペットが遊ぼうと誘っているのかと思っていたが、目で追っているうち、違うとわかった。執拗に追いかけ回す。

嫌がるサム。そして逃げる。もう一匹のウィペットは追ってはこない。この時にはこのウィペットのしつこさと、なぜサムを追いかけるのかわからなかった。
後で気づいたのだが、二匹のうちサムを追いかけ回した方が牡で、サムにマウントをして優位性を示したかった様だ。
逃げ回るためだけに走るサム。ウィペットの飼い主は放置。可哀想にとうとう椅子の下に潜り込む。それでもウィペットはしつこくつけ狙う。ここで助けるのがいいのか悪いのか何がサムのためにいいのか悩むところがダメな所だ。

やっとピンチを乗り切るも、更にテンションが下がっている風なサムにトリーツをあげようとトリーツポーチの口を開けた途端ウィペット2匹がまとわりついた。
まだトリーツを出してもいないのに、ポーチが開いた時にトリーツの香りがしたのだろう。もう離れない状態。幾ら何でもよそ様のワンコちゃんにあげるわけにはいかないし、ポーチを開けた事だってウィペット以外人間には見えないし、匂いもわからなかっただろう。側から見れば、物凄くウィペットに慕われている犬好きにしか見えない。恐るべし犬の嗅覚。

だが、我がスキッパーキは知らん顔。無関心の様に別な場所にいる。全く食への執着が少ない子だ。サムを呼び、サムにトリーツを上げようと思っていたのに、当のサムは来ないでよそ様のウィペットが反応するとは・・・ごめんね。トリーツポーチを閉じまとわり付くウィペット達に囁く。

ウィペットと楽しく遊べたらよかったのに追いかけられるだけで、思う様に遊べず残念な感じだが、サムは文句を言わない。ただ楽しくなさそうには見える。
ごめんねサム。
それにしても風が強すぎる。吹き飛ばされんばかりの強風ですっかり身体が冷えてしまった。残念だけど帰ろう。

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